多重下請け構造から脱却する実務解説 現場が選ぶコストと品質の守り方

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あなたのプロジェクトや配送現場で、「表向きは回っているのに、なぜか疲弊だけが積み上がる」感覚が続いているなら、多重下請け構造の見えない損失に巻き込まれています。単価も人数も一応そろっているのに、品質トラブル、納期遅延、離職、無償残業だけが増えていく。この状態を放置すると、発注側は総コストがじわじわ膨らみ、受注側は利益なき売上だけが増え、エンジニアやドライバーのキャリアは数年単位で閉ざされます。

多重下請け構造が厄介なのは、「何次請けまであるか」ではなく、「仕様や要件が何度翻訳されるか」で決まることです。ITシステムの開発でも、物流の委託でも、発注と現場の間にいる会社が増えるたびに、情報は薄まり、責任はぼやけ、報酬だけが紙の上で削られていきます。コスト削減や人員不足への一時しのぎとして積み上げた段取りが、後からプロジェクト崩壊と人材流出の原因に変わる。この因果関係を正しく押さえない限り、「別の下請け会社に変える」「オフショアを足す」といった対策は、構造を悪化させるだけです。

この記事は、用語の解説で終わるものではありません。IT・物流それぞれの典型ケースを軸に、多重下請け構造で実際に起きていることを、次のレベルまで踏み込んで分解します。

  • 多重下請け構造で品質が下がる具体的なメカニズム
  • 契約と責任所在の設計ミスが、無償残業と炎上案件を生む流れ
  • 表面の請求額は下がるのに、総コストと人材流出リスクが増える理由
  • 発注側・下請け会社・個人それぞれが取れる「脱却シナリオ」

そして、発注側の情シス担当、SES企業のエンジニア、物流・運送業界の経営者や配車担当が、自社と自分の立場に引き寄せて今すぐ動けるように、

  • 契約形態と責任分解の整理
  • 危険なメール・チャット文面のテンプレと書き換え例
  • 多重下請け構造から抜けるためのチェックリストとロードマップ

までを一気通貫で提示します。「多重下請け構造は仕方ない」「業界的にどこも同じ」という前提を持ったまま、単価交渉やDX施策に時間を割いても、手元に残る成果はほとんど変わりません。構造を変えないまま現場だけを頑張らせる状態こそが、最大の機会損失です。

この記事全体で得られる実利は、次のように整理できます。

セクション 読者が手にする具体的な武器(実利) 解決される本質的な課題
構成の前半 多重下請け構造の実態と、自社のどこが危険かを見抜く視点とチェックポイント なぜ問題が繰り返し発生するのか分からないまま、人員と時間だけを追加してしまう構造的盲点
構成の後半 発注・受注・個人それぞれが取るべき具体的アクションと、契約・体制・ツールを再設計する指針 何から変えれば多重から脱却できるのか不明な状態から抜け出し、コストと品質、人材を同時に守る打ち手の不在

多重下請け構造は、「気づいたときには手遅れ」になりやすいテーマです。今進行中のプロジェクト、明日の配送スケジュール、自分のキャリアのどれか一つでも守る必要があるなら、この先の章で、自社と自分の立場にそのまま当てはめてください。読まないまま次の契約や受注に進むこと自体が、最初の損失になります。

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  1. 多重下請け構造の基本と「なぜここまで多重になるのか」背景をざっくり解体する
    1. 多重下請け構造の定義と概要:何次から「多重」と呼ぶのか、業界別のライン
    2. コスト削減とリソース不足が呼ぶ“多重化スパイラル”:会社の思惑と市場の流動
  2. その「段取り」で本当に大丈夫? 多重下請け構造で現場に発生するリアルな問題
    1. 品質が下がるのは「人のスキル不足」ではなく、情報が何度も翻訳されるから
    2. 労働環境の悪化と報酬の目減り:エンジニアとドライバーが一番割を食う構造
  3. 責任所在があいまいなまま走り出すと、なぜプロジェクトは崩壊するのか
    1. 契約形態と責任分解を整理する:請負・準委任・委託・派遣の“線引き”
    2. 「誰がどこまで責任を持つのか」が決まらないときに現場で起きること
  4. コスト削減のつもりが増大? 多重下請け構造が請求と品質に与える本当のインパクト
    1. 表面の請求額は下がるのに、総コストが増える「見えない負荷」
    2. 単価だけを比較してはいけない理由:人材の流動と競争力低下のメカニズム
  5. 「実はうまくいっていない」多重下請けプロジェクトの典型シナリオを分解する
    1. ITプロジェクト編:要件は順調、テストで地獄——情報が縦割りになったケース
    2. 物流編:荷主から見えないところで増える「水屋」と無償の待機時間
  6. 多重下請け構造から脱却するための現実的な進め方:発注側・受注側・個人別ロードマップ
    1. 発注側(自社プロジェクト・荷主)のチェックリストと進め方
    2. 受注側(下請け会社)の戦略:主力業務をどう再設計するか
    3. 個人(エンジニア・ドライバー)のキャリア戦略:今のポジションをどう抜けるか
  7. DX・ツール・オフショア開発は「多重下請け構造の特効薬」になり得るのか?
    1. ツール活用で何が変わり、何が変わらないのか:プロジェクト管理・コラボレーションの限界
    2. オフショア・準委任・直契約:開発手段の組み合わせ方で構造はここまで変わる
  8. 「このサインが出たら危険信号」多重下請け構造チェックリストと簡易セルフ診断
    1. プロジェクト/業務単位で見るべき“危険なシグナル”一覧
    2. 今日からできる小さな一手:メール・チャットの書き換えで変わること
  9. 執筆者紹介

多重下請け構造の基本と「なぜここまで多重になるのか」背景をざっくり解体する

「気づいたら、どこの誰が作っているシステムなのか分からない」「荷物は届くのに、誰が運んでいるのか分からない」。多重下請け構造の怖さは、この“顔の見えなさ”から静かに始まります。

情シス担当も、SESのエンジニアも、配車担当も、同じ一言をこぼします。
「下請けが多いのは分かるけど、何が問題なのかが言語化できない」。

そのモヤモヤを、ここで一度“解剖”しておきましょう。

多重下請け構造の定義と概要:何次から「多重」と呼ぶのか、業界別のライン

現場感覚でいうと、「3次を超えたら、もう多重」と見ておいた方が安全です。ポイントは階層数そのものより、“仕様・要件が何回翻訳されるか”にあります。

業界 よくある階層数のイメージ 現場で「多重だな」と感じ始めるライン 特徴的な問題の出方
IT・システム開発 2〜5次 3次以降 4次以降はテスト・障害対応だけの人員が増える
物流・運送 2〜4次 3次以降 実運送しない中間業者が増え、運賃が紙の上で削られる
建設 3〜7次 4次以降 作業内容と責任が細切れになり、現場の安全管理がぼやける

ITだと、元請→一次下請け→二次(SI)→三次(SES)→四次(個人事業主)という流れになりがちです。4次下請けのエンジニアの担当が「テストと障害対応だけ」に固定され、要件定義や設計に一切触れられない構造は、現場では珍しくありません。

物流でも、荷主→元請運送会社→一次委託→二次委託→個人ドライバーという流れの途中に、トラックも倉庫も持たない「実運送をしない会社」が挟まり、請求だけを中継していくケースが広く見られます。そのたびに運賃が少しずつ削られ、最後のドライバーの手残りが薄くなるイメージです。

多重下請け構造とは、「実際に手を動かす人」と「お金や責任を握る人」が階層で分断されている状態と押さえると、本質を外しません。

コスト削減とリソース不足が呼ぶ“多重化スパイラル”:会社の思惑と市場の流動

多重化は、最初から悪意を持って組まれるわけではありません。よくある入り口は、発注側の次の一言です。

  • 「社内に人がいないから、とりあえず外に丸投げしたい」

  • 「予算は削られているけど、納期は動かせない」

ここで起きているのは、人員とスキルの不足を“階層”でごまかす動きです。

  • 発注企業は、一次に「固定費を抑えて柔軟に人員を調達したい」と伝える

  • 一次は、自社の正社員だけでは足りないので、二次・三次へと声をかける

  • 二次・三次は、余剰人員の“プール”として人を抱え、単価を下げてでも仕事を取りにいく

その結果、次のようなスパイラルになります。

  • 元請側は「見かけ上の請求単価」が下がるので、コスト削減に成功したように見える

  • しかし実態は、余剰人員のたらい回しと現場の無償残業で帳尻を合わせている

  • エンジニアやドライバーは「会社を変えても現場は変わらない」と感じ、離職や流出が進む

ここで重要なのが、“翻訳回数”が増えるごとに、情報と責任が薄まるという視点です。要件や積み荷の条件が、元請→一次→二次→三次…と伝わるたびに、「この程度なら現場が何とかするだろう」という“ノリ”が少しずつ混ざり、最後に大きな手戻りや事故として跳ね返ってきます。

私の視点で言いますと、ITでも物流でも「人を増やせば何とかなる」と言い始めたタイミングが、構造が壊れ始めるサインです。本来は設計・契約・責任分解を見直すべきところを、人員追加でごまかすほど、多重下請け構造の沼は深くなっていきます。

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その「段取り」で本当に大丈夫? 多重下請け構造で現場に発生するリアルな問題

「人数も会社も揃ったし、後は回すだけ」
そう思った瞬間から、多重下請け構造のプロジェクトは静かに崩れ始めます。壊れ方は派手ではありませんが、じわじわと品質と人材と財布を削っていきます。

品質が下がるのは「人のスキル不足」ではなく、情報が何度も翻訳されるから

多重下請け構造を品質面で一気にダメにするのは、階層数そのものではなく、要件が何回“翻訳”されるかです。私の視点で言いますと、ここを見誤ると「優秀な人を入れているのに品質が悪い」という不可解な状態になります。

ITプロジェクトで典型的なのが次の流れです。

  • 発注企業の事業部 → 情シス・IT部門へのざっくりした要望

  • 情シス → 元請けSIerへのRFP風要件

  • 元請けSIer → 一次下請け向けの設計指示

  • 一次下請け → 二次・三次へのタスク指示

  • 三次・四次下請けエンジニア → 「テストと障害対応だけ」担当

この時点で、同じ要件が4〜5回は別の言葉に翻訳されています。翻訳のたびに「前提」「例外」「NGパターン」がこぼれ落ち、四次下請けのエンジニアは「画面仕様書とテスト項目だけ渡され、背景は一切聞かされていない」という状態になります。

ITと物流でよく起きる「翻訳ポイント」を整理すると、問題の発生源が見えやすくなります。

契約・業務の流れと翻訳ポイントの例

業界 上流の指示 下流が受け取る情報 抜け落ちやすいもの
IT 「顧客満足度を上げたいのでUI改善」 「この画面のボタン配置変更と色変更」 ビジネスKPI、ユーザー行動データ
物流 「配送品質を落とさずコスト削減」 「運賃単価1割カット、便数維持」 待機時間の現状、ドライバーの拘束時間

発注側は「方針」を話しているつもりでも、現場に届く頃には「単なる作業指示」に変換されています。その結果、次の現象が頻発します。

  • テスト工程で仕様の食い違いが大量発覚し、手戻り地獄

  • 物流では、荷主が期待する「サービス品質」と実運送会社が理解している条件がズレたままスタート

  • 四次下請け以降の人員が「障害対応だけ」「テストだけ」に固定され、設計や要件定義に触れる機会がゼロ

これがスキルアップの道を閉ざし、「いつまで経っても単価も役割も上がらないエンジニア」「1日走っても手取りが増えないドライバー」を大量生産する温床になっています。

労働環境の悪化と報酬の目減り:エンジニアとドライバーが一番割を食う構造

多重下請け構造では、報酬は途中で何度も削られるのに、労働時間だけが末端で膨らむという逆転現象が起きます。ここをきちんと分解すると、「なぜ現場だけ疲弊して会社は動かないのか」が腹落ちします。

ITと物流の典型パターンを並べると、構造がほぼ同じであることがわかります。

多重下請け構造における報酬と負荷のズレ

立場 ITエンジニアの例 物流ドライバーの例 共通する問題
元請・荷主 月額固定の準委任契約で売上確保 荷主と運賃単価の契約 数字上は「コスト削減に成功」
中間の下請け会社 自社マージンを確保するため単価を数千〜数万円ずつ削る 実運送をしない「水屋」が伝票だけ挟み込む 報酬だけ紙の上でスライス
末端の現場 残業・休日対応・障害待機が「請求外」で対応 長時間待機・付帯作業が拘束時間だけ延ばす 労働時間だけが増え、手取りは増えない

ITでは、四次下請けエンジニアが深夜の障害対応を「準委任だから仕方ない」と無償でやらされるケースが珍しくありません。本来は契約で時間や範囲を区切るべきですが、「人員を増やせば何とかなる」という安易な発想で人だけ積み上げた結果、責任も報酬も曖昧なグレーゾーンが広がります。

物流でも、2024年問題で時間外労働の上限規制が厳しくなる中、次のような流れが目立ちます。

  • 荷主が「運賃を抑えつつ、リードタイムは維持」を要求

  • 中間の委託会社がさらに安い実運送会社に仕事を振る

  • 現場ドライバーは、荷待ちや積み降ろしの待機が請求に乗らず、拘束時間だけが延びる

表面的な請求額は下がるため、経営層や荷主は「コスト管理がうまくいっている」と錯覚しがちです。しかし実態は、余剰人員のたらい回しと現場の無償残業で帳尻を合わせているだけというケースが少なくありません。

この構造に気づかないまま「さらに単価交渉」「さらに人員追加」を繰り返すと、優秀なエンジニアやドライバーから順番に離脱していき、プロジェクトも配送網も「人気のない現場」だけが残ります。

発注側・情シス・配車担当がまず押さえるべきポイントはシンプルです。

  • 階層数ではなく、報酬が何回スライスされているかを図で書き出す

  • 現場の残業・待機・障害対応が、どこまで請求に反映されているかを確認する

  • 「人員さえ増やせば回る」という発言が出ていないか、自社ミーティングの議事録を振り返る

ここまで可視化できると、「どの段取りが現場を潰しているのか」がようやく見えてきます。ここから先は、責任所在と契約の設計をどう変えるか、という次の章のテーマにつながっていきます。

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責任所在があいまいなまま走り出すと、なぜプロジェクトは崩壊するのか

多重下請け構造のプロジェクトが壊れる瞬間は、「技術的な限界」ではなく「契約と責任がぼやけたままスタートした瞬間」にほぼ決まっています。ここを押さえないまま人員だけ積み上げると、ITも物流も、最終的には現場のエンジニアとドライバーの財布が犠牲になります。

契約形態と責任分解を整理する:請負・準委任・委託・派遣の“線引き”

法律用語としての定義より、現場でどう効いてくるかが重要です。特に多重下請け構造では、「誰が成果物に責任を持つか」と「誰が指揮命令を出しているか」がねじれた瞬間から、偽装請負や責任転嫁の温床になります。

契約形態 責任の軸 指揮命令の所在 多重下請け構造で起きがちな歪み
請負 成果物責任(納品物) 原則、受託側管理者 元請が現場エンジニアに直接指示し、偽装請負化
準委任 作業・努力義務 受託側だが現場依存 「成果保証されている」と誤解され炎上時に揉める
業務委託(包括) 役務提供全体 契約ごとにグレー 中抜き会社が増え、水屋的な中間レイヤーが肥大
派遣 労務提供(人そのもの) 派遣先担当者 実態は派遣なのに準委任契約で隠されやすい

IT開発で典型的なのは、「請負のはずなのに、3次請けの準委任契約エンジニアに、元請PMが日々タスクを直接指示する」パターンです。この瞬間、契約の建前と現場の実態が完全にズレます。

私の視点で言いますと、4次下請け以降が「テストと障害対応だけ」の準委任契約で固められている現場ほど、責任の線引きが曖昧で、炎上時に誰も前に出てこない構造になっていました。

物流では、「請負の運送契約」なのに、実運送していない中間業者が業務委託で何層も入り込み、実際にトラックを出している会社と荷主の契約関係が断絶します。結果として、「事故が起きたとき、誰が説明するのか」「待機時間を誰に請求するのか」が霧の中に消えます。

多重下請け構造の健全性を見るときは、階層数ではなく、契約ごとの責任と指揮命令が素直につながっているかを必ず確認してください。

  • 成果物に責任を持つ会社と、現場に指示を出している人物は一致しているか

  • 各レイヤーの契約種別が、実態(指示系統・仕事の中身)と整合しているか

  • 「テストだけ」「待機だけ」など、責任は軽いのに実負荷が高い役割が末端に押し込まれていないか

「誰がどこまで責任を持つのか」が決まらないときに現場で起きること

責任所在が決まらないプロジェクトでは、炎上は「突然」ではなく、メールとチャットの文面にじわじわと表れます。ITと物流の両方でよく見るパターンを抽象化すると、次のような流れになります。

フェーズ よくある文面 背後で起きていること
立ち上げ 「ひとまずこの体制でスタートしましょう。詳細は走りながら調整で」 責任範囲・決裁権・リスク分担が未定のままキックオフ
中盤 「こちらで一次切り分けしますので、原因調査と対策案の提示をお願いします」 どこまでが一次切り分けか不明で、全社で残業横流し
炎上直前 「どのレイヤーでの問題か整理して報告ください」 本来は発注側がすべき原因特定を、末端に丸投げ
炎上後 「弊社の認識とは異なります。御社側の体制にも課題があったのでは」 契約書に書いていない責任論争が始まる

IT開発では、仕様の食い違いが出た瞬間に「どのレイヤーが解釈を誤ったか」を巡る犯人捜しがスタートします。しかし、多重下請け構造では要件が3〜4回“翻訳”されて伝わっているため、末端のエンジニアは「最初の仕様書を一度も見ていない」ことが珍しくありません。にもかかわらず、障害対応と顧客説明だけは4次下請けが夜中まで対応する、という構造になりやすいのです。

物流でも似た構造があり、荷主と一次請負の間では「待機時間は発生しない想定」という暗黙の前提がある一方で、末端の運送会社とドライバーは毎日のように2〜3時間の待機を強いられます。待機料が契約上どこにも定義されていないため、誰も荷主に請求できず、結果としてドライバーの無償労働で穴埋めされます。

責任所在が曖昧な状態で動いているときの危険サインを、現場レベルのチェックリストにすると次の通りです。

  • 不具合や遅延の報告が、「一斉To」で複数社に同時送信されている

  • 会議で「この件はどこが担当でしたっけ」が毎回出る

  • 契約書より、議事録やチャットのスクリーンショットが“実質のルール”になっている

  • 炎上時の最初の一言が「まず経緯を整理させてください」になりがちだ

ここまでのサインが1つでも刺さるなら、多重下請け構造そのものより先に、「誰がどこまで責任を持つのか」を書面と体制図の両方で描き直すところから手を付ける必要があります。責任の線引きが曖昧なまま人員を増やすほど、プロジェクトは静かに崩壊に向かいます。

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コスト削減のつもりが増大? 多重下請け構造が請求と品質に与える本当のインパクト

「見積りは安いのに、なぜか毎回“赤字っぽい”」
この違和感が出た瞬間、すでに多重下請け構造の“沼”に片足を突っ込んでいます。

表面の請求額は下がるのに、総コストが増える「見えない負荷」

ITでも物流でも、多重下請けは一見「安く人をかき集められる便利な仕組み」に見えます。
ところが現場レベルで分解すると、請求書に乗らないコストが雪だるま式に膨らんでいきます。

典型パターンを整理すると、下のような構図になります。

見えているコスト 見えていないコスト(実際はここが高い)
月額の人月単価・運賃 手戻りによる追加作業時間
ベンダー見積りの合計金額 情シス・配車担当の調整工数
下請け会社ごとの請求書 人員入れ替えと教育にかかる時間
削った単価・運賃の差額 無償残業・待機時間・夜間対応

IT開発だと、4次下請け以降のエンジニアに割り当てられるのは「テストと障害対応」が中心になりがちです。
要件定義や設計に関わらないので、仕様理解が浅いまま“消火役”だけを担当することになります。

その結果として起きるのは、次のような悪循環です。

  • 要件の意図を知らないテスト要員 → バグの再発が増える

  • 不具合原因の切り分けに時間がかかる → 元請〜末端まで問い合わせが縦に何往復もする

  • スケジュール遅延を残業で吸収 → 追加請求は出せないので、現場が実質負担

物流現場でも構造はほぼ同じです。
荷主と実際に走るドライバーの間に「実運送をしていない会社」が2〜3社挟まり、請求だけが何度もリレーされる状態になります。
そのたびに数パーセントずつマージンが抜かれ、最終的には「待機時間を請求に乗せられない」「1日走っても手残りが増えない」という状況が定常化します。

私の視点で言いますと、元請側が“コスト削減に成功した案件ほど、現場は残業とたらい回しで燃え尽きている”ケースが多いのが実態です。
情シスや配車担当の時間単価を計算に入れていないために、会社全体のシステムコスト・物流コストはむしろ上がっています。

単価だけを比較してはいけない理由:人材の流動と競争力低下のメカニズム

「同じスキルなら、1人月5万円でも安いところを選ぶ」
「運賃は“相場より少し下”で叩ければOK」
この発想が続くと、企業は気づかないうちに人材市場での信用を失い、優秀層が二度と寄りつかない現場になります。

単価だけで発注先を決める現場と、構造まで見て発注する現場を比べると、数年後の差ははっきり表れます。

観点 単価だけ重視の現場 構造まで見直す現場
エンジニア・ドライバーの質 末端多重が多く、経験浅めが集まりやすい 上流・実運送に近いポジションが多く、熟練人材が残る
人材の定着 現場評価が低く、短期で離脱 キャリアパスを描けるため、継続率が高い
教育コスト 常に新人が入り、暗黙知が蓄積しない チーム内でノウハウが循環し、教育効率が上がる
市場での評判 「あそこは単価が安いが現場がきつい」 「多少厳しくても成長できる・フェア」
中長期の競争力 単価競争に巻き込まれやすい 提案力・品質で選ばれるポジションへ

IT業界では、多重下請けの末端にいるエンジニアは要件定義やアーキテクチャ設計に触れられません。
スキルが伸びないため、市場での単価も上がらない → 会社も単価交渉できない → さらに多重構造に依存するというスパイラルに陥ります。

物流業界でも、低運賃・長時間労働が続く現場からは、若手ドライバーが採用できない・中堅が他業種に流れるという形で人材が抜けます。
2024年問題が顕在化したのは、この「人材の出口」が長年放置されてきた結果です。

発注側・元請側が見るべき指標は、「今いくらで発注できるか」よりも、3年後にもこの単価で人材が集まり続ける構造かどうかです。
単価だけで現場を締め付けると、最後に失うのは自社の開発力・配送力そのものになります。

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「実はうまくいっていない」多重下請けプロジェクトの典型シナリオを分解する

ITプロジェクト編:要件は順調、テストで地獄——情報が縦割りになったケース

キックオフまでは拍手喝采、リリース前だけ阿鼻叫喚。このパターンが増えたら、多重下請け構造が静かにプロジェクトを蝕んでいます。

典型フローはこう動きます。

  • 元請:要件定義を握るが、詳細設計以降は丸投げ

  • 2次下請け:基本設計と管理、手が足りずさらに外注

  • 3次下請け:詳細設計と一部実装

  • 4次下請け以降:テストと障害対応のみ(要件へ一切アクセス無し)

ここで起きているのは「階層問題」ではなく、「要件が4回翻訳されている」問題です。4次のエンジニアは、「なぜこの仕様なのか」を知らないまま、テストケースとエラー改修だけを延々と回すことになる。私の視点で言いますと、ここまで情報が縦割りになると、もはやシステム開発というより伝言ゲームです。

よくある崩壊シナリオは次の通りです。

  • 中盤で仕様変更

  • 上流はパワポ2枚で方針変更を共有したつもり

  • 中流は「軽微な変更」と判断して再見積もりを躊躇

  • 末端は、画面とテスト仕様書が食い違う理由を誰にも聞けない

結果としてテストフェーズでバグが雪崩のように噴出し、「人員さえ増やせば回る」としてさらに4次5次を追加投入。教育コストと手戻りが膨らみ、表面の請求額よりも元請の社内コストが跳ね上がる構造が出来上がります。

物流編:荷主から見えないところで増える「水屋」と無償の待機時間

ITの「4次テスト要員」に相当するのが、物流では末端のドライバーです。荷主からは1社に見えても、裏側では複数の委託と再委託が連なり、その途中に「実運送をしない中間業者(水屋)」が挟まります。

代表的な一日を分解すると、構造がくっきり見えます。

  • 朝:配車担当から当日案件が降りてくるが、条件は「チャーター料金のみ」

  • 昼:荷待ち2時間、積み込み1時間だが待機料は契約に明記されずゼロ計上

  • 夕方:荷下ろし先で再び待機、到着時間だけ厳しく管理

  • 夜:走行距離とチャーター代は紙の上で数回マージンが引かれた後の金額

中間業者は「請求書を挟むだけ」で報酬を抜く一方、実運送を担う会社とドライバーは、待機時間も含めて長時間労働を強いられます。報酬は紙の上で細かく削られ、時間だけが現場に押し付けられる形です。

ITと物流の典型シナリオを並べると、同じ病巣が見えてきます。

視点 IT多重下請け 物流多重下請け
情報の翻訳 要件が階層ごとに意訳 荷主条件が料金条件に変換
末端の役割 テストと障害対応だけ 運転と待機だけ
見えないコスト 手戻りと教育工数 無償待機と長時間労働
誰が得しているか 中間で人員を回す企業 実運送をしない中間業者

情シス担当もエンジニアも配車担当も、「今のプロジェクトがこの表のどこに近いか」を一度冷静に当てはめてみてください。多重下請け構造の沼に、既に片足を突っ込んでいるサインが浮かび上がるはずです。

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多重下請け構造から脱却するための現実的な進め方:発注側・受注側・個人別ロードマップ

「多重下請けの沼」から抜ける鍵は、階層数ではなく“情報の翻訳回数”と“責任の置き場所”を意図的に設計し直すことです。立場別に、今日から変えられる手順だけを絞り込みます。

発注側(自社プロジェクト・荷主)のチェックリストと進め方

まず発注側が変わらない限り、構造は一歩も動きません。チェックすべきは階層ではなく要件が何回翻訳されているかです。

発注前に、次の3枚だけは必ず用意しておきます。

  • 体制図(会社名+担当フェーズ+人数)

  • 責任分解表(誰がどこまで責任を持つか)

  • 情報フロー図(要件・変更・障害連絡の経路)

見直しポイント やりがちなNG 取るべき対応
納期設定 「まず納期と金額だけ」 納期より前に責任範囲と契約種別を確定
体制把握 「一次請けしか知らない」 三次までの会社名と役割を契約前に開示させる
情報伝達 「窓口1社に丸投げ」 重要要件は一次+実務担当に同時説明

チェックリスト(抜粋)

  • 要件定義に実際の開発会社/運送会社のリーダーが同席しているか

  • 変更依頼ルートが「営業経由の口頭」になっていないか

  • 契約が業務量に対して準委任なのか請負なのか、社内で説明できるか

私の視点で言いますと、「人さえ増やせば回る」という言葉が会議で出た瞬間、そのプロジェクトは既に危険域に入っています。そこでやるべきは増員ではなく、「翻訳回数」と「責任の空白」を洗い出すことです。

受注側(下請け会社)の戦略:主力業務をどう再設計するか

受注側がやるべきことは、“何でも屋”から“翻訳を減らす専門家”への転身です。

  • 自社が本当に価値を出せるフェーズを1〜2個に絞る

    • ITなら「テストだけ」ではなく「テスト設計+品質レビュー」までセットにする
    • 物流なら「幹線輸送専門」「ラストワンマイル特化」などへ寄せる
  • 契約前に、次を必ず発注側と擦り合わせる

    • 自社が受け持つ責任範囲(成果物か、時間か)
    • チーム構成とスキルレベル
    • 直で情報を受け取れる窓口(エンド担当者との接点)
戦略 多重の末端のまま 脱却に向かう動き
受け方 単価優先で何でも受注 得意領域以外はパートナーへ委譲
提案 見積と人数だけ提示 情報フローと責任分解をセットで提案
人材 余剰人員のプール 特定領域のシニアを軸に育成

「元請と対等に話せない」状態を脱ぐには、“単価”ではなく“構造”を提案する会社になることが最短ルートです。

個人(エンジニア・ドライバー)のキャリア戦略:今のポジションをどう抜けるか

個人にできる一番の対抗策は、自分の位置を正確に言語化することです。

まず、次の4つを書き出します。

  • 自分が何次下請けか

  • 契約形態(正社員だが実態は準委任、など)

  • 関与フェーズ(要件/設計/実装/テスト/運転/積み下ろし/配車)

  • 誰から直接指示を受けているか(会社ではなく“人”の名前)

この棚卸しが終わったら、狙うべきは次のどれかです。

  • エンジニア

    • テスト専門 → テスト設計・品質管理に踏み込む
    • 客先常駐 → 直請けまたは上位請けで要件に触れられるポジションへ
  • ドライバー

    • 長時間待機が多い案件 → 配送単価と荷主の違う案件へのスイッチ
    • 実運送をしていない仲介が多いルート → 元請または一次請けへの直接応募を検討

共通して効くのは、「何時間働いたか」ではなく「どのフェーズの責任を持ったか」を履歴書と面談で語れるようにしておくことです。これが、多重下請け構造の底から抜け出すための、最も地味で最も効く一手になります。

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DX・ツール・オフショア開発は「多重下請け構造の特効薬」になり得るのか?

「ツールを入れれば何とかなる」「オフショアに振れば単価は下がる」——そう信じて走り出した結果、気づけば多重下請け構造の“底”で火事が起きている現場を何度も見てきました。ここでは、その効き目と限界を、現場目線で切り分けます。

ツール活用で何が変わり、何が変わらないのか:プロジェクト管理・コラボレーションの限界

プロジェクト管理ツールやチャットは、多重下請け構造の「翻訳回数」を減らす点ではかなり効きます。ただし、責任と契約があいまいなままでは、どれだけ高機能でも“高級な連絡帳”止まりになります。

代表的なツール活用の効果と限界を整理すると、次のようなイメージになります。

観点 ツール導入で変えられる部分 ツールでは変えられない部分
情報共有 要件・仕様を一元管理し、「口頭伝達のまた聞き」を削減 元請から4次下請け以降へ届く頃には、契約上の責任がぼやけている事実
スケジュール タスク単位で遅延を可視化し、手戻りの早期検知 そもそもの納期設定が「無理ゲー」な状態そのもの
コミュニケーション メール山崩れから脱却し、履歴を追いやすくする 誰が最終判断者かが不明な組織図・体制図

ITプロジェクトでありがちな構図として、元請が要件をチャットで流し、2次・3次がタスク管理ツールに転記し、4次下請けのエンジニアは「タスク名だけを見てテストと障害対応をする」ケースがあります。ここでは確かに情報は“共有”されていますが、要件の意図や背景は途中で削ぎ落とされ、実質的な翻訳回数は減っていない状態です。

物流現場でも、配車管理システムで荷物情報を共有しているのに、実運送をしていない中間業者が挟まり続け、ドライバーの待機時間は相変わらず請求に乗らない、という相談が出ます。
つまり、ツールは「情報の通り道」を太くするが、「お金と責任の通り道」は書き換えないという前提を押さえておく必要があります。

ツール導入を“特効薬”に近づけるために、発注側の情シス担当が最低限やっておきたいのは次の3点です。

  • 体制図と契約形態をツール上に明示し、「誰がどこまで責任を持つか」をタスクと紐づける

  • 要件定義ドキュメントに「背景・NG例・判断基準」まで書き、4次以降が解釈で迷わない状態にする

  • チャットでの指示に「契約上の前提」と「変更に伴う影響範囲」をセットで書く運用ルールを決める

私の視点で言いますと、ここまで踏み込んで初めて、ツールが“管理ごっこ”から“多重下請けリスクの減速装置”に変わります。

オフショア・準委任・直契約:開発手段の組み合わせ方で構造はここまで変わる

開発手段の選び方を誤ると、「安い人月を遠くからかき集めた結果、翻訳レイヤーだけが増える」という最悪パターンに陥ります。逆に、契約と組み合わせ方を設計し直すと、多重下請け構造そのものを薄くできます。

手段 多重下請け構造との“典型的な関係” リスク 構造を良くする使い方
準委任契約 人月ベースで3次・4次へ流れやすい 責任が曖昧になりやすく、偽装請負に接近 元請直契約の比率を増やし、役割を「成果物レビュー」「要件調整」に寄せる
請負契約 成果物責任を盾に、再委託を重ねやすい テストと障害対応だけ末端へ押し付けられる 再委託禁止・再委託時の事前承諾を契約に明記し、翻訳回数を制限
オフショア開発 最下層に置かれやすい 文化・言語の違い分だけ“追加翻訳”が発生 直契約で要件定義フェーズから参画させ、上流との距離を縮める
フリーランス直契約 中抜き防止には有効 個人依存・継続性のリスク 要件レビューや技術リードを任せ、下請け階層を1段分圧縮する

オフショアを4次下請けのさらに下にぶら下げる構造は、「多重下請け構造×言語の壁」という最悪の掛け算になります。要件が日本語から日本語に2〜3回翻訳された後、英語や現地語に変換されるため、元の意図が完全に失われやすいからです。

一方、オフショアベンダーと元請が準委任や混在型契約で直接つながり、要件定義レビューや設計段階から参加させると、翻訳回数を一気に減らせます。ここでポイントになるのが、「誰がどの言語で最初の仕様を書くか」と「その仕様を変更する権限を誰が持つか」です。

情シス担当やプロジェクト責任者が、自社主導で次の順番を設計できると、多重下請け構造はかなりマシになります。

  • まず自社でビジネス要件を整理し、「変えてよい部分/変えてはいけない部分」をラベリングする

  • 元請、もしくは直契約の技術パートナーと、準委任で上流レビュー体制を組む

  • その下に請負・オフショアを置く場合も、「再委託階層」と「翻訳回数」に上限を設ける

  • エンジニア個人が要件定義・設計に触れられる比率をKPIにし、4次下請けを“テスト要員だけ”にしない

このレベルで契約と体制を組み直すと、「人員を積めば何とかなる」という発想から、「翻訳レイヤーを減らして、少人数で濃くやる」プロジェクト設計へと舵を切れます。DXもツールもオフショアも、それを支えるための“装備”に過ぎません。

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「このサインが出たら危険信号」多重下請け構造チェックリストと簡易セルフ診断

「気づいたら炎上案件のど真ん中にいた」
その一歩手前でブレーキを踏むためのセルフ診断ポイントを、ITと物流の現場で実際に見てきたパターンからまとめる。

プロジェクト/業務単位で見るべき“危険なシグナル”一覧

まずは、自社のプロジェクトや配送案件を次の観点でざっくり棚卸してほしい。

1. 体制・契約周りの赤信号

  • 階層数は把握しているが、「要件が何回翻訳されているか」を誰も説明できない

  • 契約が準委任か請負かあいまいなまま、人員だけ増員している

  • 下請け会社名は一覧化されているが、「実運送していない中間業者」「テスト専門の4次下請け」への発注比率が見えない

  • 発注担当が「人さえ増やせば回る」と口癖のように言っている

2. 日々の運用でにじむ赤信号

  • 障害・クレーム対応の際、「まずどこに電話するか」で毎回揉める

  • IT開発では4次下請け以降がテストと障害対応だけを担当し、要件定義会議に一度も呼ばれない

  • 配送現場で、ドライバーの待機時間が日報に書かれていても、請求データには反映されていない

  • 人員入れ替えが多く、「いつも新人に仕様を教え直している」状況が半年以上続いている

3. お金と時間に潜む赤信号

  • 見積書は安くなっているのに、社内稼働やレビュー時間が前年より明らかに増えている

  • 下請けエンジニア・ドライバーの報酬が据え置きか減少しているのに、案件単価はほぼ変わっていない

  • コスト削減の成果説明に「現場の残業」を前提としたロジックが紛れ込んでいる

このあたりが複数当てはまるなら、すでに「多重下請け構造の沼」に片足を突っ込んでいる可能性が高い。

下記の簡易表で、自社の位置を一度言語化しておくと対策が打ちやすくなる。

多重下請けリスク簡易セルフ診断

観点 低リスク状態 高リスク状態
情報の翻訳回数 元請〜現場が同じドキュメントを見る 階層ごとに別仕様書・別エクセル
責任の線引き 契約と実態が一致 準委任なのに実態は請負指示
報酬の流れ 実作業者の単価が見える 「請求だけ挟む会社」が複数
人材の役割 下請けも要件・設計に参加 末端はテストと障害対応のみ
手戻り 原因分析が構造レベル 個人スキルのせいで片付ける

今日からできる小さな一手:メール・チャットの書き換えで変わること

多重下請け構造は、一気に解体しようとすると必ず跳ね返りが来る。現場のメールとチャットを「翻訳回数を減らす」方向に書き換えるだけでも、責任と情報の迷子をかなり抑えられる。

1. NG文面とOK文面の差分を意識する

ITプロジェクトの発注担当がやりがちな文面を例にする。

-NG例
「とりあえず今月中にリリースしたいので、人員を追加して対応お願いします。詳細は一次受けさんから伝えてください。」

-問題点
発注側の責任範囲がゼロ/要件が丸投げ/翻訳回数が増える

-OK例
「今月末リリースを目標にしています。
・今回の仕様変更の背景
・影響範囲の仮説
・発注側が負う責任範囲
をこちらで整理した上で、要件レビューに二次・三次の担当エンジニアも参加してもらえますか。追加人員が必要なら、役割単位で見積もりをください。」

物流の配車チャットでも同じだ。

-NG例
「明日この荷物、誰でもいいので車手配してください。着時間は先方と調整してもらえれば。」

-OK例
「明日の○○便について
・必着時間
・積み下ろし条件
・荷主側の責任範囲
をこちらで明示します。実運送を行う会社と直接グループチャットを作り、待機時間も含めて共有しましょう。」

2. メール作成前にチェックする3ポイント

  • 「誰がどこまで責任を持つか」が一読で分かるか

  • 「翻訳役」になっている中間会社を前提にしていないか

  • 実作業者がこの文面だけで動けるか

私の視点で言いますと、炎上案件ほどメール本文に「人を増やせば何とかなる空気」が濃く滲む。逆に、責任と情報を先にクリアにしている現場は、多重下請け構造そのものが深刻化しにくい。今日送る1通のメールから、構造の再設計を始めてほしい。

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執筆者紹介

主要領域は通信・インターネット・ITサービス・SEO・DX分野。株式会社アセットが運営するWebメディア「NewCurrent」編集部として、SES企業、開発会社、SaaSベンダー、フリーランスエンジニア、物流・EC事業者など多様なプレーヤーに継続的に取材し、公的資料・業界レポートと現場ヒアリングを突き合わせながら、多重下請け構造や契約・責任分解の実態を整理してきました。本記事では、その横断的な知見をもとに、発注側・受注側・個人が実務で使える判断軸とチェックリストとして再構成しています。

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