海外向けに英語サイトを立ち上げたのに、問い合わせも売上も伸びない。この状態が長引くほど、せっかくの投資と担当者の時間は静かに目減りしていきます。多くの企業で共通しているのは、グローバルサイトとは何かを定義しないまま「とりあえず多言語対応のWebを作る」ことから始めてしまう構造的欠陥です。
本記事は、単なる「グローバルサイトとは」の解説や事例紹介にとどまらず、タイプ選定、CMSとWebインフラの条件、翻訳運用、デザイン、ガバナンスまでを一気通貫で整理します。ゲートウェイタイプかコーポレートサイト型か、BtoB製造業に現実的な構造はどれか、情報システム部門や海外拠点を巻き込む権限マップをどう描くか、価格だけで選んだCMSがなぜ現地運用を止めてしまうのか。
さらに、WOVNなどの多言語SaaSや翻訳会社に任せても失敗するパターン、海外Webデザイントレンドをそのまま真似して崩れるUX、ローンチ後3ヶ月で差がつくアクセスログとSEOデータの見方まで、グローバル web サイトを「資産」に変えるための実務ロジックを具体的な問いとして提示します。これからグローバルサイト構築やリニューアルを任される方にとって、本記事を読まずに動き出すこと自体が最初のリスクになります。
- その英語サイトは本当にグローバルサイトか?よくある勘違いをまず壊す
- 「タイプ選び」を間違えると全てが崩れる - ゲートウェイタイプやコーポレートタイプやメディアタイプで広がる現実
- グローバルサイト構築がこじれる本当の原因は社内の座組みにあった!
- CMSやWebインフラを“価格だけ”で選んだ会社のグローバルサイトによくある落とし穴
- 翻訳さえ頼めば何とかなるは危険信号!グローバルサイト多言語対応の落とし穴
- グローバルサイトデザインやUXは“かっこいい”だけでは通用しない!実例とNGパターン大公開
- ローンチ後3ヶ月で差がつくグローバルサイト運用体制とWebガバナンスのリアルな裏側
- これからグローバルサイトを任される人へ - NewCurrent流で送り出す「失敗しないための問いかけ集」
- この記事を書いた理由
その英語サイトは本当にグローバルサイトか?よくある勘違いをまず壊す
「英語ページを追加したから、もう世界対応できているはず」
この思い込みから、多くの企業の海外戦略が静かに失速していきます。特に製造業やBtoB企業では、構造を誤ったままリニューアルを進めてしまい、2年後に全面作り直しというケースが目立ちます。
私の視点で言いますと、最初に壊すべき勘違いは「言語追加=グローバル対応」ではないという点です。
グローバルサイトとは何かを日本語で言い切ると、どんな役割のWebなのか
グローバルに展開する企業にとって、この種のサイトは「世界の誰に対しても、自社の公式な顔と基本情報を一元的に提示するための基盤」です。ポイントを整理すると次のようになります。
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世界共通のブランドメッセージを発信する
-
事業・製品・採用・IRなどのコア情報を整理して見せる
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各国サイトや現地拠点へのハブになる
コーポレートサイトとの違いは、「想定読者の広がり」と「各国拠点との関係性」にあります。日本語だけのコーポレートサイトは、日本市場中心の説明責任を果たすものですが、グローバルに展開する場合は、投資家、パートナー、求職者、仕入先など世界中の関係者が同じ入口から入ってくる前提で設計する必要があります。
英語サイトと多言語対応サイトやインバウンドサイトの“線引き”が甘いと必ず迷走する
以下の区別が曖昧なままプロジェクトを始めると、高確率で構造が破綻します。
| 種類 | 主な目的 | 想定ユーザー | 典型的な失敗例 |
|---|---|---|---|
| 英語サイト | 最低限の会社紹介 | 英語を読める一部の関係者 | 英語だけ作って売上上位の非英語圏を取りこぼす |
| 多言語対応サイト | 複数言語で同じ情報を提供 | 主要市場の顧客・パートナー | 言語ごとに内容がバラバラになり運用破綻 |
| インバウンド向けサイト | 訪日旅行者への案内 | 観光客・短期滞在者 | 観光情報ばかりでBtoBニーズを拾えない |
| グローバル向けサイト | 世界の利害関係者の入口 | 取引先・投資家・求職者・メディア | 役割を定義せず中途半端な情報の寄せ集めになる |
インバウンド向けサイトは、旅行者への案内や店舗情報が中心で、企業グループ全体の事業やIRを扱う場ではありません。一方、グローバルに展開する企業のWebは、世界中の法人・個人に対して「事業の全体像」「信頼性」「問い合わせ経路」を提示する役割を持ちます。
線引きが甘いと、次のような迷走が起こります。
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途中から「観光情報も載せたい」「採用もまとめたい」と目的が増殖
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どの言語でどこまで翻訳するか決められず、CMS構造が複雑化
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情報システム部門と海外拠点が、どのサイトを優先すべきか合意できない
結果として、担当者は更新運用で疲弊し、海外拠点は「使えないから独自サイトを立ち上げる」という二重投資に陥ります。
情報サイトランキング上位企業のグローバルサイトに共通する3つの役割
情報サイトランキング上位に登場する企業の事例を眺めると、デザインの派手さよりも「役割の明確さ」が共通しています。整理すると、次の3点に集約されます。
-
ブランドプレゼンスの土台
企業理念、歴史、サステナビリティ、トップメッセージなどを一元的に配置し、「この会社は世界で何をしているのか」を一目で伝えています。ロゴや色だけでなく、コンテンツのトーンまで統一されていることが特徴です。
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ビジネス情報のハブ
事業領域や製品ポートフォリオを、業界外の人にも理解できるレベルで構造化しています。各国サイトや販売パートナーへのリンクも、このハブから整理して案内されています。
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採用・IR・問い合わせの共通入口
投資家向け情報、グループ採用情報、BtoBリード獲得フォームを世界共通の入口として提供し、そこから地域別や法人別の詳細ページに案内する設計になっています。
これら3つの役割が明確であれば、「どの情報をどこまで多言語化するか」「CMSやクラウドインフラをどう設計するか」の判断軸もぶれにくくなります。逆に、役割を定義しないまま英語ページを増やしていくと、後続の設計すべてに歪みが出てきます。
次のステップでは、この役割を前提にしたタイプ別構造の選び方が、プロジェクトの成否をどう左右するのかを掘り下げていきます。
「タイプ選び」を間違えると全てが崩れる - ゲートウェイタイプやコーポレートタイプやメディアタイプで広がる現実
海外向けWebを任された瞬間から、静かにプロジェクトの命運を分けているのが「タイプ選び」です。ここを曖昧にしたままCMS選定やデザインに走ると、後からサイト全体を作り直す羽目になります。
ゲートウェイタイプやコーポレートタイプやメディアタイプとは何かを“運用目線”でスッキリ説明
運用体制と役割で3タイプをざっくり整理すると次のようになります。
| タイプ | 主な役割 | 更新主体 | 向いている企業規模・目的 |
|---|---|---|---|
| ゲートウェイ | 世界の入口・拠点紹介・ブランド統一 | 本社が骨組み、各国が詳細 | 拠点数が多い製造業、BtoB法人 |
| コーポレート | 企業情報・IR・採用・事業紹介の一元発信 | 本社中心 | 上場企業、グループ会社を束ねたい会社 |
| メディア | オウンドメディア・リード獲得・SEO | 専任マーケ組織 | 技術解説や事例で問い合わせを狙う会社 |
運用の現場感で見るべきポイントは3つです。
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どこまで本社でコンテンツを統一するか
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各国拠点がどの範囲まで自由にページを作成できるか
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CMSの権限管理とワークフローを誰が握るか
私の視点で言いますと、この3点を最初にテキストで言語化しないと、CMS要件もWebインフラ要件もすぐにブレ始めます。
製造業やBtoB企業に多い“ゲートウェイ型とローカルサイト”の意外な落とし穴
製造業やBtoB企業では、「本社で入口だけ作り、詳細は各国サイトへ」というゲートウェイ型がよく選ばれますが、ここに見落としがちな罠があります。
-
各国ごとにデザインと情報構造がバラバラ
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製品名や技術用語が国ごとに訳し方・表記が統一されない
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更新担当が異動すると、どのCMSでどのページを直すか誰も分からない
特に多いのが、ブランドロゴとメッセージだけは統一しているのに、問い合わせ導線と製品情報が国ごとに迷路になるパターンです。ユーザーから見ると、世界観がつながっていないため、せっかくのWebマーケティング投資が目減りします。
このタイプを選ぶ場合は、最低でも以下を本社主導で決めておくと混乱が減ります。
-
コーポレートサイトと各国サイトで共通に使うテンプレートの範囲
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製品カテゴリと技術タグの共通マスタ
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多言語対応CMSで一元管理するページと、ローカルCMSに任せるページの線引き
ここまで決めずに「各国の裁量でローカライズしてください」と投げると、数年後にはサイト運用コストが雪だるまのように膨らみます。
世界のグローバルサイト事例から見える「タイプ別の失敗しやすい条件」とは
海外企業の事例を横断的に見ると、タイプごとに“こじれやすい条件”がはっきり出ています。
| タイプ | 失敗しやすい条件 | 早期に確認すべきチェックポイント |
|---|---|---|
| ゲートウェイ | 拠点数が多いのにWebガバナンス文書がない | デザインガイド・用語集・CMS権限表はあるか |
| コーポレート | 本社の承認フローが重く更新が遅い | リリースまでの承認ステップと担当者は明確か |
| メディア | マーケ人材不足で記事が増えない | 目標本数とライター・翻訳リソースは確保済みか |
よくある炎上パターンは、「タイプの複合」です。例えば、トップページはコーポレート型、製品情報はゲートウェイ型、技術記事はメディア型という構造自体は悪くありませんが、どの部分をどのCMSで運用し、どの指標で評価するかを決めていないと、社内で責任の押し付け合いが始まります。
タイプ選びで迷ったら、まず次の3つだけ紙に書き出してみてください。
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このサイトで本社が必ずコントロールしたい情報は何か
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各国拠点に任せてもよいが、最低限統一したいルールは何か
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CMSやクラウド基盤を誰が最終的に管理・予算担保するのか
ここまで言語化できていれば、ゲートウェイ型でもコーポレート型でもメディア型でも、後からの構造破綻はかなり防げます。逆に言えば、ここが曖昧なまま「かっこいいWebデザイン事例」だけを真似すると、数年後に作り直しの稟議書を書くことになります。
グローバルサイト構築がこじれる本当の原因は社内の座組みにあった!
かっこいいWebデザインも高機能CMSもそろえたのに、なぜか海外向けサイトだけ泥沼化する。多くの企業で起きているこの現象は、技術ではなく社内の座組みと権限設計が原因になっているケースが目立ちます。私の視点で言いますと、炎上案件の8割はコードではなく「社内の人間関係図」で説明できてしまいます。
プロジェクトが一見順調に進んだのに中盤で炎上した“あるある”シナリオ
開始3カ月までは順調に見えるのに、要件定義が固まった瞬間から地獄が始まります。典型的な流れは次の通りです。
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本社マーケが中心となり制作会社と構築開始
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情報設計が終わった段階で、各国拠点から「その商品はうちでは販売していない」「現地法ではこの表現はNG」などの指摘が一気に噴出
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ページ構造の作り直しと翻訳やり直しで、スケジュールもコストも倍増
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最後に情報システム部門が登場し「セキュリティ要件を満たしていない」と指摘、CMSやインフラの見直しに発展
ここで共通するのは、誰が何に対して決定権を持つかを最初に決めていないことです。言い換えると、英語や多言語対応より前に「組織対応」が破綻している状態です。
本社と情報システム部門と海外拠点と外部パートナーで描くグローバルサイト権限マップの全貌
炎上を防ぐコツは、プロジェクト計画書より先に権限マップを描くことです。役割をあいまいなまま進めると、コンテンツ運用もWebガバナンスも必ずブレます。
| 領域 | 主担当 | 最終決定者 |
|---|---|---|
| ブランド方針・メッセージ | 本社コーポレートコミュニケーション部 | 経営層 |
| 情報アーキテクチャ | 本社マーケ/Web担当 | 本社マーケ責任者 |
| CMS・インフラ・セキュリティ | 情報システム部門 | CIO/情報システム部門長 |
| 各国ローカル情報 | 現地マーケ・営業 | 各国拠点長 |
| 翻訳・ローカライズ | 翻訳パートナー+現地レビュー | 本社マーケ+各国拠点代表 |
| 制作・実装 | 外部制作会社/開発会社 | 本社プロジェクトオーナー |
ここで重要なのは、「主担当」と「最終決定者」を分けて書くことです。たとえばCMS導入を制作会社に任せても、セキュリティポリシーに合致するかの判断は情報システム部門にしかできません。海外拠点も「ページは作れるがブランド判断はできない」など、得意・不得意がはっきりしています。
相談メールに頻出する「誰が最終決定者か分からない」状態を防ぐリアルチェックリスト
炎上予備軍のプロジェクトには、着手前のメールや会議メモに共通のサインがあります。次の項目に1つでも心当たりがあれば、座組みの再設計を強くおすすめします。
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目的が「海外向けに情報発信したい」としか書かれておらず、売上・採用・問い合わせなどの優先順位が決まっていない
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本社と各国拠点のどちらがコンテンツ更新の主担当か、誰も言い切れない
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CMSの権限設計を「あとで決める」と先送りしている
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情報システム部門がキックオフに参加していない、または議事録に名前が出てこない
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翻訳レビューを「現地にいる誰か」に期待しており、時間も工数も見積もっていない
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個人情報保護やクッキー同意などの法務・セキュリティ要件を、RFPや要件定義書に一行も書いていない
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トップページのデザイン議論ばかりが進み、サイト構造図や運用フローのドキュメントが存在しない
このチェックリストに先に向き合う企業ほど、構築後の運用が安定します。華やかなデザイン事例やランキングを眺める前に、社内の「誰が」「どこまで」を言語化しておくことが、海外展開を成功させる一番地味で一番効く打ち手になります。
CMSやWebインフラを“価格だけ”で選んだ会社のグローバルサイトによくある落とし穴
コスト削減のはずが、ローンチ直前に情報システム部門からストップがかかり、プロジェクト全体が数カ月逆戻りになるケースは珍しくありません。表面上の料金表だけでCMSやクラウドを決めると、後から「セキュリティ要件・権限管理・多言語運用」が一気にツケとして返ってきます。
私の視点で言いますと、失敗案件の多くはツールそのものよりも、「どの国が何を更新し、誰が責任を負うか」という設計抜きでプロダクト比較だけ先行している状態から始まっています。
グローバルサイトCMSに必須の機能とあると運用効率が段違いになるワンポイント機能
最低限そろっていないと、運用フェーズで確実に悲鳴が上がる機能は次の通りです。
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多言語・多拠点向けの権限管理(国別ロール、承認ワークフロー)
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言語別URL・hreflang対応などのSEO設定
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クラウド基盤やCDNとの連携、ログ取得機能
ここに、現場の負担を一気に下げるワンポイント機能を足すと、運用コストが桁違いに変わります。
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翻訳メモリとの連携や用語集管理
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ページテンプレートのパターン化とコンポーネント設計
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各国サイトの更新状況を一覧できるダッシュボード
特にBtoB企業では、拠点ごとにWeb担当の経験値がバラバラです。編集権限とテンプレートをうまく縛ることで、「誰が触ってもブランド崩れしない」状態を仕組みで作ることが重要になります。
クラウドCMSやオンプレやヘッドレスCMSや多言語SaaSの向き不向きをスパッと仕分ける視点
ツールの比較表を見る前に、「自社の制約」と「運用の現実」から逆算して選んだほうが失敗しにくくなります。
| 選択肢 | 向いているケース | 要注意ポイント |
|---|---|---|
| クラウドCMS | 拠点が多く、IT人材が限られる企業 | 情報システム部門のクラウドポリシー |
| オンプレ | 機密性が極端に高い業種 | 海外拠点からの表示速度・運用負荷 |
| ヘッドレスCMS | デザイン自由度と多チャネル展開を重視 | フロント実装の開発体制が必須 |
| 多言語SaaS | 既存サイトに多言語レイヤーだけ載せたい | CMSと翻訳基盤を混同しないこと |
ポイントは、CMSと多言語SaaSは役割が違うという線引きです。翻訳レイヤーを提供するサービスを、コンテンツ管理の中核として使おうとすると、後からワークフローや権限設計で限界にぶつかります。
また、情報システム部門のクラウド利用基準(データ保管地域、SLA、監査ログ要件など)をRFPに落とし込み、ベンダー選定の前に社内合意を取っておくことが、炎上防止の近道になります。
Webインフラでよく起きる“最後の最後で情報システム部門NG”ケースのリアル
Webインフラは、「動くかどうか」だけでなく「社内ルールに適合しているか」が問われます。よくあるNGパターンを整理すると、次のようになります。
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WAF(Webアプリケーションファイアウォール)やCDNを前提とした設計になっていない
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フォーム送信時にhttpsとhttpが混在し、ブラウザ警告が出る
-
Cookie同意管理がなく、GDPRや各国の個人情報保護法への説明が不十分
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アクセスログの保存期間や取得範囲が社内規程と合っていない
これらは「後からでも何とかなるでしょ」と軽く扱われがちですが、実際にはデザインやCMS実装を巻き戻すレベルの手戻りを生みます。
情報システム部門と初期段階で握っておきたい論点をまとめると、次のリストになります。
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想定ユーザー地域と必要なCDN・リージョン
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WAFやDDoS対策の提供主体(社内かクラウドか)
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Cookie同意バナーやプライバシーポリシーの最低要件
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ログの保管場所・期間・閲覧権限
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障害発生時の連絡フローとSLA
BtoBの大規模サイトほど、セキュリティレビューに時間がかかります。制作会社だけに任せず、本社と海外拠点、情報システム部門を巻き込んだ「インフラ要件シート」を最初に作ることで、ローンチ直前のストップを防げます。
翻訳さえ頼めば何とかなるは危険信号!グローバルサイト多言語対応の落とし穴
海外向けサイトの多言語対応は、翻訳会社と多言語SaaSに申し込めばゴールだと思われがちです。ところが現場では、ここからが本当の地獄の始まりになっているケースが山ほどあります。
翻訳会社と多言語SaaSに丸投げして炎上するパターンとそのメカニズム
炎上パターンは、驚くほど似た筋書きで起きます。
- 日本語ページを急いで制作
- 翻訳会社やWOVNのようなサービスに一括依頼
- 各国拠点に確認依頼
- 修正指示が雪崩のように戻り、スケジュール崩壊
原因は技術ではなく、原文とレビュー体制の設計不足です。
主な炎上トリガーを整理すると次の通りです。
| 問題の起点 | 何が起きるか | 結果 |
|---|---|---|
| 原文が日本市場前提 | 現地で使えない表現だらけ | 全面書き直しで納期遅延 |
| 各国の法規制差を無視 | 禁止表現の指摘が後出し | ページ構造から作り直し |
| レビュー担当が不在 | 誰が最終OKか決まらない | 差し戻しループでコスト増 |
| 翻訳ツール任せ | 用語が案件ごとに揺れる | ブランド毀損と信頼低下 |
翻訳サービスは「テキストを他の言語に変換する装置」に過ぎません。
その前にどの情報を、どの粒度で、誰の責任で出すかを決めていないと、優秀な翻訳パートナーほど仕事が止まります。
私の視点で言いますと、要件定義の終盤で「やっぱり現地の型番は全部違いました」と出てきて、情報設計を丸ごとやり直したプロジェクトが複数あります。これはツールの問題ではなく、事業情報の棚卸しを前半でやらなかったことが原因でした。
翻訳スタイルガイドや用語集を作る企業だけがこっそり得している3つのリターン
炎上案件と、静かに成功する案件の分かれ目がスタイルガイドと用語集の有無です。地味ですが、投資対効果は極めて大きいです。
準備できている企業が得ている主なリターンは次の3つです。
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翻訳コストの安定化
・「この単語は基本訳さない」「この製品名はカタカナで統一」のようなルールがあると、初回以降は翻訳工数が目に見えて減ります。 -
ブランドトーンの統一
・敬語レベル、一人称、キャッチコピーのニュアンスをガイドに落とすことで、国やベンダーが変わってもブランドメッセージがブレません。 -
レビュー時間の短縮
・各国担当は「訳の良し悪し」ではなく「事業内容の正しさ」だけを見ればよくなり、承認フローが一気にシンプルになります。
スタイルガイドに入れるべき項目の例です。
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文章トーン(フォーマルかカジュアルか)
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製品名・会社名・部署名の表記ルール
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禁止表現(誇大表現、比較表現など)
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日付・数字・単位の書き方
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画像内テキストを翻訳する範囲
この5点だけでも決めておくと、多言語サイト全体の運用効率が段違いになります。
まず英語常識を疑うべき理由と売上構成から逆算する着手言語の選び方
多くの企業が「とりあえず英語版から」と着手しますが、BtoBや製造業では必ずしも合理的ではありません。ポイントは、言語ではなく市場から考えることです。
最初に確認したいのは、次の3つの数字です。
| 視点 | 何を見るか | 目的 |
|---|---|---|
| 売上構成 | 国・地域別売上比率 | どの市場に最初に投資すべきか |
| 利益率 | 国・製品別の粗利 | 翻訳コストを回収しやすい市場か |
| デジタル活用度 | 各拠点のWeb運用体制 | ローンチ後に運用できるか |
例えば、売上の大半がドイツと中国で、日本語と英語の社内人材が豊富であれば、最初に強化すべきはドイツ語と中国語のサイトです。英語だけ作っても、肝心の顧客が読めなければ問い合わせは増えません。
着手言語を選ぶ際の実務的なステップは次の通りです。
- 直近3年の国別売上と案件単価を整理する
- 国ごとに「現地担当者の有無」「法規制の厳しさ」をランク付けする
- 売上ポテンシャルと運用可能性の掛け算で、優先市場トップ3を決める
- その3市場の言語を、第一フェーズの対象言語にする
英語はあくまで「世界の共通語」であって、自社ビジネスの共通語とは限りません。
どの地域の財布からお金が出ているのか、という冷静な視点で言語戦略を組み立てることが、グローバルサイトを投資対効果の高い資産に変える近道になります。
グローバルサイトデザインやUXは“かっこいい”だけでは通用しない!実例とNGパターン大公開
光る動画、フルスクリーンのヒーロー画像、モーションたっぷりの海外サイトを見て「こんな感じでお願いします」と言われた瞬間から、BtoB企業のWeb担当の悪夢は始まります。見た目優先で進めると、問い合わせは増えず、更新もできず、インフラ費用だけが積み上がるサイトになりがちです。
私の視点で言いますと、デザイン検討の前に「誰が・どの地域へ・どんな情報を届けるサイトなのか」を言語レベルで定義しない限り、どんなにおしゃれでもビジネスは動きません。
海外Webデザイントレンドで見える共通UXとBtoBグローバルサイトで真似してはいけない罠
ここ数年の海外Webデザイントレンドには、次の共通UXが目立ちます。
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大きなタイポグラフィと大胆なビジュアル
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フルスクリーン動画や3D風モーション
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スクロール連動アニメーション
-
余白を活かしたミニマルレイアウト
どれもブランドメッセージの発信には有効ですが、BtoBの大規模サイト運用ではそのまま採用すると負荷過多になります。
| トレンド要素 | よくある導入理由 | BtoBでのNGポイント |
|---|---|---|
| フルスクリーン動画 | ブランドを強く見せたい | 現地の通信環境で重く離脱率が急増 |
| リッチアニメーション | 先進的な印象を出したい | CMS更新に高度なコーディングが必要で現地更新不可 |
| 1ページ完結型LP | ストーリー重視 | 製品点数が多い製造業では情報が埋もれやすい |
「世界の最新デザイン」に引っ張られすぎず、現地ユーザーの回線速度と端末、CMS運用スキル、Webインフラのコストをセットで評価することがポイントです。
かっこいいWebサイト海外事例をそのまま真似して日本企業が脱線する理由
海外のかっこいい事例を参考にすること自体は有益ですが、次の前提が違うままコピーすると高確率で迷走します。
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意思決定スピード
海外本社はブランドや法務の承認フローがシンプルなケースが多く、大胆なコピーやビジュアルを高速で試せます。日本企業は関係部門が多く、攻めた表現ほどリリースが遅れます。
-
コンテンツ量と製品構造
海外のスタートアップ事例は製品数が少なく、シングルページ構造でも整理しやすい一方、製造業やBtoB企業は製品・仕様・適用事例・技術資料など情報の層が厚く、同じ構造では欲しいページにたどり着けない状態になりがちです。
-
リスク許容度
海外のニュースサイトやサブスクサービスは、クッキーバナーや解約導線を最小限にしてCVを取りにいく場合がありますが、日本の法人サイトで同じことをすると「解約できないサイト」として炎上リスクを抱えます。
参考事例を「構造」「導線設計」「運用前提」に分解して、自社の法規制・株式市場・ブランドガバナンスに合わせて再設計する視点が欠かせません。
UIUXを整える前に決めるべきグローバルサイトナビゲーションと言語切り替えの鉄則とは
ナビゲーションと言語切り替えは、見た目よりも迷わないルール化が勝負どころです。最低限、次の3点はデザイン検討前に言語化しておくと安全です。
-
グローバル共通ナビで「必ず見せる情報」を固定する
例:会社情報、事業・製品ポートフォリオ、IR、採用、ニュースなど。本社が責任を持って発信する情報を上段ナビで統一します。
-
地域・言語切り替えの優先軸を決める
国別か言語別かを曖昧にすると、ユーザーが迷子になります。
- 国別切り替え: 法人・サービス体制が国単位で異なる場合
- 言語別切り替え: 同じ内容を複数言語で展開する情報サイト寄りの場合
-
URLとCMS運用のルールを先に決める
サブディレクトリ /en /de /cn などで管理するのか、サブドメインで分けるのか、WebインフラとCMSの構造に直結します。後から変えるとSEOと運用コストのダブルパンチになります。
ナビゲーション設計の初期段階で、次のようなチェックリストを使うと、デザイン議論がぶれにくくなります。
-
主要3クリック以内に到達させたいページはどれか
-
本社発信のコンテンツと各国ローカライズコンテンツの境界はどこか
-
英語以外の優先言語は何か(売上・拠点・現地人材の観点から選定)
-
言語切り替えボタンの位置と名称を全ページで統一できているか
ここまでを固めたうえで、はじめて海外Webデザインギャラリーやランキングを参考にすると、「かっこよさ」と「運用のしやすさ」を両立したサイトに近づきます。デザインはゴールではなく、ビジネス要件をきれいに見える形に変換する最後の仕上げだと考えて設計していくことが重要です。
ローンチ後3ヶ月で差がつくグローバルサイト運用体制とWebガバナンスのリアルな裏側
リニューアル直後はどの会社のサイトもきれいに見えます。差がつくのは「公開から3ヶ月後」、更新が止まるか、世界中の拠点から自然に情報が集まるかの分かれ目です。
本社集中運用か各国分散運用かそれともハイブリッドかを見極める思考法
最初に決めるべきは「誰がどこまで責任を持つか」です。構造を決めないままCMSや制作会社を選ぶと、ほぼ確実に運用で破綻します。
代表的な3パターンを整理すると、判断軸が見えやすくなります。
| 運用タイプ | 向いている企業像 | 主なメリット | 主なリスク |
|---|---|---|---|
| 本社集中 | ブランド最優先のBtoB大企業 | デザインとメッセージを統一しやすい | 現地の更新が遅れ、情報が古くなりやすい |
| 各国分散 | 各国にWeb人材と予算がある企業 | 現地ニーズに即した情報発信ができる | デザインと表現がバラバラになりやすい |
| ハイブリッド | 多拠点製造業やグループ企業 | 戦略と現場の両立がしやすい | 権限分担を設計しないと混乱する |
ポイントは、「売上が大きい地域ほど権限を多く渡す」「ブランドリスクが高い領域ほど本社で握る」という線引きをすることです。
私の視点で言いますと、この2軸を整理せずに「とりあえずハイブリッドで」と始めたプロジェクトは、9割が権限トラブルを抱えます。
Webガバナンス文書やデザインシステムやコンテンツガイドラインが運用コストを激変させる
運用体制を決めたら、次に「ルールを紙に落とす」フェーズです。ここをサボると、更新のたびにSlackやメールで説明する羽目になり、人件費がどんどん溶けていきます。
最低限そろえたいガバナンス文書は次の3つです。
-
デザインシステム
- ロゴ使用ルール、カラーコード、フォント、レイアウトパターン、画像トーン
-
コンテンツガイドライン
- 文章トーン、NG表現、表記ルール(製品名、単位、日付)、メタ情報の書き方
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編集・承認フロー定義
- 誰が原稿を作り、誰がレビューし、誰がCMSで公開ボタンを押すか
これらを1度作ると、制作会社への指示書・海外拠点への教育資料・RFPの共通言語として再利用できます。特に多言語対応では、スタイルガイドと用語集の有無で、翻訳費用とレビュー時間が大きく変わります。
アクセスログやSEOデータから“次の1手”を決めるためのシンプル指標の読み解き方
運用の評価軸を複雑にし過ぎると、誰もダッシュボードを見なくなります。最初の3ヶ月で見るべき指標は、BtoB製造業の担当者であれば次の5つに絞ると判断しやすくなります。
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地域別セッション数
- 想定した優先市場からアクセスが来ているか
-
ランディングページ別直帰率
- 製品ページや資料ダウンロードページの直帰が高すぎないか
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問い合わせ・資料請求などのコンバージョン数
- 各国サイトから本社や現地法人へのリードが何件生まれているか
-
言語別平均ページビュー
- 英語だけが読まれていない、あるいは特定言語だけ極端に弱くないか
-
検索クエリ上位20件
- 実際にどのキーワードで見つけられているか
重要なのは、指標を見るたびに「誰がどのコンテンツを直すのか」まで決めることです。アクセスログをマーケティング担当だけが眺めて終わると、運用体制は変わりません。
本社と現地、情報システム部門とWeb担当が、この数字を共通言語として議論できるかどうかが、3ヶ月後の「勝ち負け」を分けるポイントになります。
これからグローバルサイトを任される人へ - NewCurrent流で送り出す「失敗しないための問いかけ集」
海外売上の未来を左右するのに、スタート時点はA4一枚の依頼メールだけ。そんな危うい船出を、今日で終わらせませんか。
プロジェクト開始前に自分と上司に投げておきたい10のキラークエスチョン
炎上プロジェクトの多くは、要件定義ではなく「問い不足」から始まります。最低限、次の10問を紙に書き出して、上司と握ってから動き出してほしいです。
- このサイトで、最優先で守るのは「ブランド」か「商談」か「採用」か
- 3年後の海外売上比率はどの地域で伸ばしたいか
- 英語以外で、本当に狙うべき言語はどれか(売上と拠点の人材で判断しているか)
- コンテンツ最終決定者は誰か(名前で書けるか)
- 法務・情報セキュリティのチェックは、どのタイミングで誰が行うか
- CMSの管理責任者は本社か現地か、その両方か
- 各国拠点のWeb・マーケティング担当は、月に何時間サイト運用へ割けるか
- 既存コーポレートサイトとの役割分担を、一文で説明できるか
- ローンチ半年後に「成功」と判断する指標は何か(問い合わせ数などを数値で)
- 予算のうち、構築費と運用費の比率をどう配分するか
この10問に答えられないままCMS比較を始めると、ほぼ確実に遠回りになります。
ツールやCMSやベンダー比較の前に押さえておくべき判断軸メモの作り方
私の視点で言いますと、担当者がまず作るべき資料は「要件定義書」よりも、1枚の判断軸メモです。ポイントは、ツール名を書かないことです。
上流で整理したい判断軸を、表に落としておくとブレにくくなります。
| 軸 | 選択肢の例 | 優先度 |
|---|---|---|
| 運用主体 | 本社集中 / 各国分散 / ハイブリッド | 高 |
| 更新頻度 | 週次 / 月次 / 四半期 | 中 |
| 対応言語数 | 2〜3 / 4〜7 / 8以上 | 高 |
| セキュリティ要件 | WAF必須 / CDN必須 / IP制限など | 高 |
| 翻訳プロセス | 機械翻訳+人 / 完全人手 | 高 |
| 連携が必要な他システム | MA / CRM / 採用管理 | 中 |
この表をベースに、次のようなメモを書いておくとベンダー打ち合わせが一気に実務的になります。
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CMSは「多言語・多サイト一元管理」と「権限管理」が最優先
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Webインフラは、各地域からのレスポンスとWAF・CDN対応が必須
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翻訳は、原文作成を本社で標準化し、各国レビューで最終調整する前提
ツール名の前に「何を守り、何を捨てるか」を決めることが、結果的にコスト削減につながります。
ITとWebの実務を追いかけてきたメディアだからこそ伝えたいグローバルサイトで焦らないための視点
現場でよく見かけるのは、「世界レベルのデザインを目指す」より前に、「社内レベルの合意形成でつまずく」ケースです。そこで、焦らないための視点を3つだけ押さえておくと楽になります。
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RFPより先に権限マップ
誰が何を決めるかを先に決めれば、CMSやクラウド選定の議論が一気にクリアになります。 -
翻訳は“費用”ではなく“プロセス”から見る
翻訳スタイルガイドと用語集を最初に作る企業ほど、後半のレビュー工数とトラブルが確実に減ります。 -
「まず英語」ではなく「まず売上と人材」
売上比率が高く、かつ現地にWeb運用ができる人材がいる地域から言語対応を始めると、成功体験を社内に見せやすくなります。
この3つを押さえておくと、情報サイトランキング上位の事例を見ても、「かっこいいから真似る」のではなく、「自社の座組みに合う部分だけ盗む」という冷静な判断ができるようになります。担当になった瞬間はプレッシャーも大きいですが、問いと判断軸さえ押さえれば、海外展開の土台をつくる面白いプロジェクトに変わっていきます。
この記事を書いた理由
著者 – 村上 雄介(newcurrent編集部ライター)
英語サイトを作ったのに海外から一切問い合わせが来ない、という相談をここ数年で20社近くから受けました。話を聞くと、多言語CMSや翻訳SaaSは導入しているのに、「このサイトは何のために存在するのか」「本社と海外拠点のどちらが最終決定権を持つのか」が曖昧なまま走り出しているケースが大半でした。
印象的だったのは、製造業A社の案件です。価格重視でクラウドCMSを選び、WAFや権限設計を後回しにした結果、情報システム部門からローンチ直前にNGが出て全て作り直しになりました。翻訳も「まず英語だけ」で進めたため、実際に売上比率が高いアジア向けには一切響かない構成になっていました。
私自身、検証用に構築した多言語サイトで、ゲートウェイ型とローカルサイトの役割分担を曖昧にしたせいで、どの国のユーザーも迷う導線を作ってしまったことがあります。この失敗をきっかけに、タイプ選定、権限マップ、インフラ条件、翻訳運用、デザイン、ガバナンスを一気通貫で整理しない限り、「英語サイト」は資産にならないと痛感しました。
本記事では、そうした現場での失敗と改善の積み重ねから、「これだけは最初に決めておくべき」問いを形にしています。グローバルサイトの担当になった方が、同じ遠回りをしなくて済むように、実務で本当に使える判断軸だけをまとめました。


